医療法人清仁会 洛西ニュータウン病院
副院長 兼 外科部長
趙 秀之
日本外科学会 認定医・専門医・指導医
日本消化器外科学会 認定医・専門医・指導医
日本消化器病学会 専門医
日本乳癌学会 認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医・
暫定教育医
検診マンモグラフィ 読影認定医(A)
ALTA療法(四段階注射法) 講習会修了
近畿外科学会 評議員
腹腔鏡下手術について
腹腔鏡下手術とは、「腹腔鏡」というテレビカメラでお腹の中を見ながら行う手術のことです。従来のおなかを切る手術は「開腹術」と呼びますが、腹腔鏡下手術は開腹術と比べて非常に小さな創(きず)ですむために患者さまの術後の痛みが少ないことと、それにより回復が早いことが一番の長所です。
胆石などに対しての腹腔鏡下胆嚢的手術は約20年前に始まりましたが、現在では標準手術となっています。大腸がんに対する腹腔鏡下手術は、日本でも約15年前から導入され、当初は早期大腸がんに適応とされていましたが、進行大腸がんにも適応が拡大されつつあります。
大腸がんの患者数は、近年増加傾向にあり、今後もさらに増加することが予想されています。シミズ病院グループでも、がんの部位や進行度などの腫瘍側因子および肥満、開腹歴などの患者因子などを総合的に検討し、進行がんに対しても積極的に腹腔鏡下手術を行っています。
腹腔鏡下手術のメリット
- 傷痕が小さく目立ちにくい
- 術後の痛みが少ない
- 術後早期に通常の食事がとれる
- 入院期間が短い
腹腔鏡下手術後
開腹手術後
腹腔鏡下手術中
手術の流れ(大腸がんの場合)
麻酔は全身麻酔と硬膜外麻酔の併用で行います。
腹腔内(腹腔:おなかの壁と臓器の間の空間)
に炭酸ガスを入れて膨らませ、お臍に直径10mm程度のトロッカー(筒)を立て、ここからこの手術用に開発された細い高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入します。
手術操作に用いる器具(把持鉗子、電気メスなど)を挿入するために、5~10mmのトロッカーを4か所に追加します。
カメラでおなかの中の様子をモニターに映し出し、病変部位を含む大腸や周辺のリンパ節を切除します。この手術は、専用の高性能カメラの拡大した鮮明な画像を見ながら行います。従来の開腹手術では見えにくかった部位や細い血管、神経まで見えるため、繊細な手術が可能となり、結果として手術中の出血量は少なくなります。
腹腔内での操作を終えたあと、4~5cmの切開創から病変を取り出します。腸管と腸管を吻合(繋ぎ合わせること)し、手術を終了します。
より安全に手術ができる腹腔鏡システムを導入
洛西ニュータウン病院では、2020年3月に新しい腹腔鏡システム(オリンパス社 VISERA ELITE)に入れ替え、これまで以上に精度の高い手術が可能となりました。同システムに接続して使用する外科手術用内視鏡(同社 ENDOEYEシリーズ)は、腹腔、胸腔に特化したレンズ設計のビデオスコープで、先端径5mmという細さながらハイビジョン化を実現しています。先端のCCDから得られる術野は極めて鮮明で、色再現性に優れるのが特徴です。また、先端が上下左右4方向、100度に湾曲するので、術野の正面視や対象部位の裏側観察などが可能になり、より安全に手術ができるようになりました。腹腔鏡システム
オリンンパス社 VISERA ELITE
外科手術用内視鏡
オリンンパス社 ENDOEYE シリーズ
鮮明な術野
大腸がん以外の主な対応疾患
- 胃がん
- 幽門側胃切除術、胃全摘術を行っており、2年前より完全腹腔鏡下手術を導入しています。大腸がん同様、早期がんから進行がんにも適応を拡大しています。
- 胆石症、急性胆のう炎
- 洛西ニュータウン病院では腹腔鏡下胆のう摘出術を第一選択としています。特に急性胆のう炎では、TG18ガイドラインに沿い、早期腹腔鏡下手術症例が増えています。
- 急性虫垂炎
- 腹腔鏡下手術を第一選択としています。膿瘍形成性虫垂炎では、保存的治療後、3カ月以内に待機的に腹腔鏡下切除を行い、良好な成績を得ています。
- 鼠径ヘルニア
- 腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP)を第一選択としています。手術時間も1時間~1時間半程度とかなり短縮され、安定した治療成績となっています。
よくあるご質問
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腹腔鏡下手術にはどのようなデメリットがありますか?
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開腹手術と比べると手術時間がやや長くなります。また、出血が多くなった場合に対応が困難となることがあります。
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手術にかかる時間はどれくらいなのでしょうか?
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大まかには、胆石、虫垂炎、ヘルニアなどの良性疾患では2時間以内、大腸がん、胃がんの悪性疾患では4~5時間程度です。
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全身麻酔が必要ですか?
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全例に全身麻酔が必要です。安全な視野を確保するため、腹腔内に炭酸ガスを送気し、お腹を膨らまします。安全な手術のためには、完全な筋弛緩が必要になります。
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手術の途中で開腹術に移行することはありますか?
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安全、確実な手術の継続が困難と判断した場合は、開腹術に移行することがあります。予想以上に進行したがんや、術中出血量が多くなり安全な視野確保が困難となった場合などが該当します。
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入院期間はどれくらいですか?また、仕事への復帰はいつ頃できますか?
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合併症がなく経過した場合、胆石、虫垂炎、ヘルニアなどの良性疾患は術後3~4日間、大腸がん、胃がんの悪性疾患は術後2週間程度で退院が可能な状態となります。職場復帰は良性疾患で10~14日程度、悪性疾患で3~4週間程度が目安となります。
外科専門外来について
シミズ病院グループでは、その他にもさまざまな外科専門外来を展開しています
- 乳腺外科
- 乳腺外科は、洛西ニュータウン病院では毎週金曜日の午前に趙 秀之(日本乳癌学会認定医)が担当しています。近年乳がんの罹患数(がんになった人数)は増加傾向で、女性では臓器別で第1位となっています。しかし、乳がんは比較的治療効果の期待できる癌種であり、大きさ20mm以下で発見できれば、約90%の患者さまで治癒させることができます。そのためには、定期的な自己検診+(最低)2年ごとの画像評価(市健診、人間ドックなど)をおすすめしています。乳房のしこりに気づいたなど乳がんを心配される患者さまは、ぜひ乳腺外来の受診をおすすめいたします。手術に際しても、新たに赤外線観察カメラシステムを導入し、センチネルリンパ節理論に基づいて高精度で低侵襲な手術が行えるようになりました。また、術前・術後の化学療法も積極的に行っています。
- 肛門外科
- 肛門外科は、洛西ニュータウン病院では毎週火曜日の午後に岡山徳成(日本外科学会専門医)が、シミズ病院では毎週月曜日午後に永井利博が担当しています。特に、いぼ痔の治療については、従来の結紮切除術だけでなく、ALTA療法(内痔核四段階硬化療法)も積極的に施行しています。この治療法は、いぼ痔は切除せず、注射療法により投与部位に強い急性炎症を起こし、いぼ痔の脱出および出血を軽減、消失させるものです。手術当日入院していただき、翌日には退院可能となります。また、いぼ痔以外にも、肛門周囲膿瘍、直腸脱の治療も行っています。肛門周囲の症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
- 下肢静脈瘤外来
- 下肢静脈瘤外来は、洛西ニュータウン病院では毎週木曜日の午前に松村博臣が担当しています。2016年3月から、下肢静脈瘤に対して「血管内レーザー治療」を開始しました。従来の静脈瘤を引き抜く手術では、足の付け根に3cmほどの傷がつきます。これに対してレーザー治療は、レーザーのファイバーを通す針穴だけで治療が可能です。保険適応もあり、これまでに200例以上の手術症例を経験しています。足の血管がボコボコしている、足がだるい、むくむなどの症状がございましたら、ぜひ下肢静脈瘤外来を受診してください。
- 腹部外科・便秘外来
- 亀岡シミズ病院では、「腹部外科・便秘外来」を開設しています。便秘で悩まれる患者さまは増加傾向にあり、全人口の約1割程度といわれています。便秘にもいろいろなタイプがあり、それぞれに応じた投薬が必要です。また、大腸癌などが潜んでいる場合もあります。便秘でお悩みの患者さまはぜひご相談ください。